初めて佐藤愛子先生の作品を読んだのは、中学生くらいの時です。
もう題名などは忘れてしまったのですが、日常の出来事や、憤怒の体験などを面白おかしく綴ったエッセイでした。
それ以来、佐藤先生の本を度々読んでいます。
初めて読んでから、考えるともう、かれこれ30年以上になります。
長いなあ…と、思ったら、佐藤先生も(もうすぐ)九十八歳なのだとハッとしました。
本書「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」は、そんな佐藤先生の年齢を感じさせるエピソードが満載でした。
ご自身の体調の事、病院での出来事。
そして、子どもの頃の思い出などに関しては、今の日本とはかけ離れた、歴史上の出来事のような、不思議なノスタルジーのようなものを感じました。
とはいえ、そんなぬるい事ばかりが書かれている訳でもありません。
一瞬、若い頃の佐藤先生が戻ったような、鋭い文章に出会ったりします。
例えば、
「こんにゃくに「お」なんかつけるな!」と怒ったり、
虐待で我が子を死なせた父親の事を
「この父親はヘンタイである。」
と、きっぱり言い切ったりなどがそうです。
やはり佐藤先生は佐藤先生だなあと思ったりします。
ただやはり、お歳はお歳です。
この本の結びの言葉、
「みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷り去ります。」には、
本当に
これでさようならは寂しいなあ。
…と、思いました。