Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

「鶏小説集」 坂木司

鶏料理🐓が出てくる小説集です。

と言っても、グルメ小説ではありません。

この作者さんの別の作品に「肉小説集」というものがあり、それに関連しているようです。
(続編とかではないようですが)


この本に収められている、5編の小説の主人公は、学生や父親や漫画家という、立場や年齢がバラバラな人達です。

ですが、ご近所だったりなどでちょっとした繋がりがあります。

こういう小説はたまに見かけるけど、様々な視点で物事を見る事ができて面白いです。

現実の世界でも、小説みたいに視点を変える事ができたら、もっとみんなまわりの人に優しくなれるのかもしれないなあ…と、いつもそんなふうに思います。


話がそれました。本の感想に戻ります。

なかでも特に心に残ったのは、自分の子どもの事を好きになれない父親の話です。

下手に綺麗事でまとめる事なく、思いっきり本音を出しています。

でも、全然嫌な感じはしませんでした。

多分、主人公の考え方に共感できる部分があるからだと思います。


ここのところちょっとやる気が出なくて本を読む気も失せていたのですが、

この本を読んで良かった😊

そう思える1冊📖📕でした。

坂木司さんはやっぱりいいです。

「破れざる者たち」 沢木耕太郎

この本は、ボクサーや野球選手、競走馬や長距離ランナーについてのルポをまとめた本です。

昭和50年代頃に書かれたものらしい上に、私にはスポーツ全般に対する知識がないため存じ上げない方々ばかりでした。

ですがそんな私でも心が動かされる部分が多く、スポーツを通じて極める事の奥深さや人間にとって幸せな一生とは何か?…という事を考えさせられます。

イシノヒカルに関しては人間ではなく馬ですが、競走馬の一生もまたどうなのだろうと思ったり、関わっている人間たちをどう見ているのだろう…と、思ったり……、

また、冒頭のカシアス内藤さんが極める事に苦戦しているのに対し、最終章の輪島功一さんはどんな状況でも「前に進む」事で、極めるとはこういう事なのか…?と、思わせてくれたり……、

長嶋茂雄さんというスターと同期だったために実力があるのに注目されなかった野球選手がいたり……。

中でも榎本喜八さんは超越した感じで、この人の肉声をもっと聞きたかったなと思いました。

遺書を残して自死した長距離ランナー円谷幸吉さんの章では、スポーツが人の一生を変えてしまう事もあるのかと感じた……と、言うか…、
ただただ悲しくやり切れない思いが残りました。

読み終えたあとに、なんだかスゴい本を読んでしまったなと思いました。

「小さいおうち」 中島京子

この物語は、女中奉公をしていたタキさんが、若い頃の事を書いた覚え書きを中心に進行します。

そして、覚え書きの読者として親戚の大学生が登場します。

タキさんが、覚え書きに書いている「小さいおうち」に奉公していたのは、昭和の始め頃です。
東京大空襲の前にそこを辞めて、田舎に帰っています。

なので物語全体の印象は、昭和の古き良き時代を感じさせるほのぼのとしたものでした。

が、実はその影に、様々な社会問題……
例えば「表現の自由」や「女性問題」などが潜んでいたと思います。

因みにこの作品は映画化されていて、Amazonのプライムビデオでのコメント欄には、「超一流のプロバカンダ作品」などと書かれていました。

けれども私はそうは思いません。

プロバカンダはそのように悪用する人がいるからプロバカンダになるのであって、この作品に限っては、作家が素直に思った事を文章にし、映画がその世界を丁寧に描いただけだと思いました。

それはさておき、この小説では、タキさんの奉公先の若奥様がとても魅力的です。

おしゃれで美しくお祭りが大好きな華やかな人だけど、言葉遣い丁寧なせいか、私にはおっとりした女性に感じられました。

でも、私が若奥様に1番魅力を感じたのは、辛い出来事にも涙を見せないところです。

そして、そんな若奥様をいつも近くで見ているタキさんの、「」書きにも()書きにも表現する事のできない「想い」
……が、なんとも切なく、この物語の全部なのではないかと思うのです。

「漁港の肉子ちゃん」 西加奈子

10代で家を出た肉子ちゃんは、男の人に騙されてボロボロになって漁港に辿り着き、そこでシングルマザーとして土地の人に助けられながら暮らしていく…。


と、いうのがざっくりのあらすじです。

「肉子ちゃん」というのはもちろんあだ名で、本当の名前は「菊子」。
で、娘の名前は「喜久子」といいます。


この、漢字は違うけど読みが一緒な名前の秘密はラストで明かされるので最後まで必見です。


ストーリーは娘の視点で書かれています。

「天真爛漫な母親と、そんな母を冷静に見つめる娘」といったかたちです。

肉子ちゃんのキャラクターはとにかく明るいので、冷静な娘さんとのやりとりは微笑ましく、文章のテンポも良く表現もユニークです。

けれども、私には合わないところがありました。

それは、肉子ちゃんが漁港に初めてきた日の描写です。

雪の降る描写を「解けねえぞ」と、叫んでいるようとか、強いとかいう表現をしていて、それが私のイメージとは真逆なのです。

私が北国の雪に持つイメージは、何度も何度も解けながら諦めないで少しづつ少しづつ積もってゆく、そんな地道に頑張るイメージなのです。
(雪国そだちなもので、ここはちょっと気になりました。スミマセン💦)

とはいえ

多くの人を感動させる優れた小説である事は間違いないとおもいます。

「ライ麦畑でつかまえて」 J.D サリンジャー

1980年12月8日。
ビートルズジョン・レノンさんが銃弾に倒れ、撃った犯人がその時ポケットに忍ばせていたのが「ライ麦畑でつかまえて」という本だったというのは有名な話です。


高校生の時にその話を知った私は、早速「ライ麦畑でつかまえて」を購入して読みました。

でもその時読んだ感想はなんだかボンヤリした感じ…

あんまり詳しく覚えていなんですよ。

覚えるほどのストーリーが特にないというか…、

いや。なくもない。

学校を辞めさせられた主人公が、実家へ帰るというストーリーです。

特にハラハラするでもなく、解きたくなる謎がある訳でもありません。

ですが、私はこの本がとても好きです。

主人公ホールデン君の語る言葉には、ティーンエイジャー特有の繊細な感性が溢れていたり、

彼が出会う人や知ってる人について語る時「あ〜、そういう人いるよね。」って、思ったりするところとか、そんなところが好きなのだと思います。

今回この本を読み返して、主人公のホールデン君はなんだかカワイイなあと思いました。

高校生の私が読んだホールデン君は、尖った印象だったのに。

私も歳をとったなあ…。

まあこの本は、自分で実際に読んでみて良さを感じる本かなと思います。

どの本でもそうかもだけど…。

「魔女とキリスト教〜ヨーロッパ学再考〜」 上山安敏

とても興味深い内容ではあるものの、私にとってはとてもハードルの高い本でした…(´×ω×`)
まず魔女の事を知るには宗教の知識が必要になるからです。

この本によると、古代ヨーロッパで広く信仰されていたディアナ信仰は母性宗教であるため、父性宗教であるキリスト教の布教に影響していた…らしいです。

そしてその布教の過程で生まれたのが魔女??…みたいな…。
簡単に言うとそういう事ではないかと思いました。
…とても大雑把な解釈ではありますが。

でも面白かったのは、母性宗教に寛大だったヨハネとそうではなかったパウロは仲が悪かったという記述です。

私にはどの部分がそうなのかは分かりませんが、ヨハネの黙示録パウロへの当てつけではないかという解釈があると書いてあり、

そうなると宗教が神秘的なものではなく、人間によってコントロールされているものなのかもしれないとすら思えてしまいます。

そしてそれが「魔女裁判」のような理不尽がまかり通った理由ではないか?…と。

私が思っていたよりも魔女に関する伝承は古く考察は深く、サバトでは媚薬(幻覚による空中遊泳?)や人喰い、幼児殺しなどの残虐な事が行われていたようです。

これまで私が思っていた魔女のイメージは、宮崎駿監督の映画「魔女の宅急便」に代表されるような可愛らしいものだったのですが…。

ですがこの本を読んで、人間の欲望に翻弄された歴史を持つ、複雑な存在というイメージに変わりました。

「猫のよびごえ」 町田康

私が町田康さんを初めて知ったのは、30年位前に姉が買っていた日本のロック専門雑誌で、です。

当時姉は、ストリートスライダーズというバンドのファンで、私はTMネットワーク松岡英明さんのファンでした😊💕

まあそれはさておき、そんなふうに町田さんは、もとはバリバリのパンクロッカーだった訳です。

その後、芥川賞を受賞されたり、「パンク侍切られて候」という小説が映画化されるなど、音楽活動だけでなく執筆活動でも活躍されるようになりました。

そんな経歴をお持ちのせいか、町田さんの文章にはそこはかとなくユーモアやメロディが感じられます。

この「猫のよびごえ」は、町田さんが一緒に暮らしている猫たちとの日常を綴ったエッセイです。

可愛らしい猫の写真つきのエッセイは、他に「猫にかまけて」「猫のあしあと」「猫とあほんだら」の3冊があります。
どれも面白おかしい内容です(ちょっと泣けるところもあるけど)

ですが私はこのシリーズの最終巻である、「猫のよびごえ」が1番好きです。

始めの頃より猫達との会話も阿吽の呼吸になっているし、新しく保護猫を迎える度に町田さんが記憶喪失になってしまうのも面白い。

でも、亡くなった保護猫達の事をすぐに書けなかった町田さんの優しさが私は1番好きです。

「みんなが生きていたこと、生きた時間を書いていきたい」
この本にはこんな事が書いてます。

またそれとは別に、黒猫王子のエルという猫は
「真心も下心も同じ心ですよ。心は心です。……」
と言っています。

猫についての本を書く事は、真心ではあるけれども下心でもあるのでしょうか…?


エルの言葉について考える町田さんの心の揺れが、この「猫のよびごえ」で、猫のフォトエッセイシリーズをおしまいにしようとした理由かな?などと私は勝手に考えてしまうのです。