Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

「リオノーラの肖像」 ロバート・ゴダード


私はたまに小説を読んだあと、

「もしもあの時アレがアレでなかったら……」

なんて考える事があります。

そして今回も、

「もしもリオノーラさんのお父さんが戦争にいかなかったら、彼女は家族揃った家庭で幸せに暮らし、兄弟も産まれ、貴族の称号も失われずにすんだかもしれない」

なんて考えました。

…いや、それでは小説にならないのですが😅

真面目な話、戦争を扱った文学や映画はたくさんありますが、この作品は戦争の直接的な被害ではなく、間接的な部分を扱った複雑な内容の、不思議な印象の残る作品でした。

物語の構成は、プロローグ、第1部〜第3部、エピローグ、となっていて、第1部〜第3部までは過去の出来事を語る形で物語は進みます。


・プロローグ(現在)
70歳のレオノーラさんが娘を連れてチエブヴァル英国記念碑(※2)を訪れ、自分の半生を語り始める。

・第1部(過去)
(語りはリオノーラ)自分の出生の謎、不幸な生い立ち、祖父の屋敷ミアンゲイトを出て新生活をスタートさせ、父の戦友と名乗る人物の訪問を受ける。

・第2部(過去)
(語りの中心は父の戦友と名乗る人物)戦争の事、ミアンゲイトの屋敷で起こった事、その人間模様、父や母の事。

〜父の戦友と名乗る人物が語った内容をリオノーラさんが娘に語っていると考えるとややこしく、またその語りの中でもさらに語りがあり、語りの中で語られた内容をさらに語るのか…とか…考えてしまい…ちょっとアタマがごちゃごちゃに…(°ω。)💦💦〜

・第3部(過去)
(語りはリオノーラ)語られた内容の中で、いまだ残る謎を今度はリオノーラさん自身が調べ、真実をつきとめる

・エピローグ(現在)
レオノーラさんと娘さんは、チエブヴァル英国記念碑を訪れたのとは別の日に、タイン・コット陸軍墓地(※2)を訪れる。
長い間自分の感じていた事がはっきり分かったリオノーラさんは、幸せになる事を強く決意する。


…という、長い長い感動の物語なのです😭✨(私のこの説明ではちょっと伝わらないかもしれませんが…)。

ちなみにリオノーラさんはお母さんと同じ名前です。

母娘とも、不運に見舞われた人生を送っています。

ですが私は、娘を残して亡くなった母リオノーラさんの方をより可哀想に感じました。

それもあって、娘リオノーラさんは自分が幸せになる事をつよく決意をしたのかな...?なんて事も考えました。

両親をなくして祖父の家で育てられたリオノーラさんですが、祖父とはあまり関わりを持てなく、祖父の後妻は意地悪で、使用人も冷たく、唯一優しくしてくれた執事さんもお屋敷を去る事になったりで、頼れる人のいない寂しい生活を強いられてきました。

けれども、父の戦友と名乗る人物の話を聞いたあと、自分でもなんかいろいろやって謎を解いたり、大事な人に再会したり、忘れていた曾祖父との思い出も蘇ったりして、「自分、もしかしてひとりぼっちではなく、ちゃんと愛されていたのでは…?」なんて思えて、「幸せになる」と、強く決心するに至ったのかなと私は思いました。

登場人物それぞれ面倒くさいところのある人たちばかりで、リオノーラさんのお父さんでさえ「ちょっとそれはどうかな…?」と、思えるような人物でした。

それと、お屋敷の客人であるアメリカ人が、「戦争で勝つのは戦争に参加しない者だ」とか、「僕は実業家だから戦争で儲ける」などといった、軍人さんの心を逆なでするような言動をする無神経な人物で、こんなにアメリカ人ディスって大丈夫か?と、心配になるくらいでしたし、ふっ、と、今起こっている🇷🇺の🇺🇦侵略の事を言っているような錯覚を起こしてしまいました。

作品全体を通して、戦争は多くの犠牲を払う虚しいものであり、やはり起こってはいけない事なんだな、と、つくづく考えさせられました。



※1、チエブヴァル英国記念碑…第一次世界大戦中(1914年~1918年)の「ソンムの戦闘」での行方不明者、七万三千四百十二人の名前が刻まれた碑

※2、タイン・コット陸軍墓地…1917年8月〜1918年11月にイーブル塹壕線突出部で戦死した一万一千九百八人の兵士が葬られている巨大墓地。
記念碑には戦没地不明の行方不明者、三万四千八百八十八人の名前が刻まれている。

この小説では、記念碑の大きさや墓石の多さが強調されているようで、改めて戦争の悲惨さを感じさせられました。