Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

「バイバイ、ブラックバード」 伊坂幸太郎

主人公の星野ちゃんは、もうすぐ「あのバス」に乗せられて、どこか遠いところに連れていかれる事になりました。

でもその前に、お別れを言うために、監視役の繭美という女性と一緒に5人の「元カノ」に会いに行きます…


…と、いうのが、この小説のざっくりストーリーです。

もしかしたら、
「こんな感じの話、どこかで…?」と、思った方もいらっしゃるかもしれません。

そうです。

これは、太宰治の「グッド・バイ」という小説のオマージュ作品とも言われているのです。

作者の伊坂幸太郎さんが担当編集者さんから、
太宰治のグッド・バイを完成させませんか?」
と、持ちかけられて書いた小説なのです。

しかもこの小説、発表の仕方も変わっています。
が、その事の詳細はここでははぶきます。

ただ、出版業界が不振とも言われる中、こうして頑張る編集者さんがいる事に私は感動したので、ここでちょっと触れてみたくなりました。

前置き長い💦(> <)…本題に戻ります。

この小説は5つの短編で構成されています。
1人の女性につき、1話と言う事ですね(^^)

5股もかける「星野ちゃん」とは一体どんな人物なのか?
お金もなくイケメンでもない、ごくごく普通の男性…、しかもあんまり頭が良くない…という人物。
こんな男性がモテるなんて…?
でも、不思議と女性はこのような、「へなちょこで優男」という男性に惹かれるものなのです(一部のマニア?)

ああ…。この小説でも私が一番強く感じた事を書いてしまうとネタバレになってしまうんですよね…。

なのでここはひとつだけ。

作者の伊坂さんと同じく、私もこの5つの短編の中で4話目が一番好きでした。

世の中、誰でも大小問わず、心配事のひとつやふたつあるものです。
それが解決しなくても、心の中で「もういいや。」って思える事が大切なんだな、と思えるような短編でした。
以上です。(* u.u)) ペコリッ

「元素生活 」 寄藤文平

「元素」ってなんだっけ?

中学のときに理科で習った、
「物を小さくしていって、もうこれ以上は小さくできない!!」ってくらい小さくした物の事だっけ?
確か、「周期表」とやらを「水平リーベ…」とかなんとか言いながら暗記したような…。

私にとって「元素」は、そういうあいまいなイメージしかない物でした。

そんな「あいまいな物」が、この「元素生活」という本の主役です。

でも私、この本すっごく好きなんですよ。

イラストが面白くって…。

元素が主役と言っても、小説のような物語の本ではありません。

言わば図鑑のようなものです。

元素が私たちの生活とどのような関わりがあるのか?という事や、
周期表の元素をひとつひとつ取り上げて説明する文章などで構成されています。

そして、この本の中で光るのが
元素を擬人化したイラストです。

たまにパンツをはいていない男の人のイラストがあったりもしますが…(´>///<`)💦

個性的なイラストと、親しみやすい内容の文章が最高の組み合わせの本です。

私のような非理数系の大人や、子どもでも楽しんで読める本ではないかしら…?と、思います。(^^)

「花の鎖」 湊かなえ

この物語の主な登場人物は、同じ町に住む3人の女性です。

伴侶を愛し、献身的に尽くす女性。

商店街の和菓子屋でアルバイトをする傍ら、絵画教室で講師を勤める女性。

勤めていた英語教室が経営破綻し、職を失ってしまった女性。

この3人です。

彼女たちの共通点は、商店街にある和菓子屋できんつばを買ったり花屋で花を買う事くらいです。

ですが話が進むうちに共通点は増えていき、「彼女達は一体どんな繋がりがあるのだろう?」と、気になって、どんどん先に進みたくなります。

この3人の女性の生き方を通して、人は生きているだけで誰かを救う事ができる力があったり、人間の弱い心が誰かを不幸にしてしまう場合もあるのだなあ…など、いろいろ考えさせられます。

けれども私が1番強く感じた事をここで書いてしまうと、ネタバレのようになってしまうので残念ながら書けません。

でも、1番いいなあと思った事なら書けます。
それはこの、「花の鎖」というタイトルです。

この物語の内容にとても合っていて、
女性らしく、センスあるタイトルだなあと思いました。

f:id:jyunko5jyunko5:20200616215305j:plain

「くちびるに歌を」 中田栄一

新垣結衣さん主演、アンジェラ・アキさん主題歌の映画、「くちびるに歌を」の原作です。

田舎の中学校に赴任した新任教師(新垣結衣さん)が、合宿部の顧問となって「NHK全国合宿コンクール」を目指すお話です。

主人公は合宿部員の男の子と女の子です。
自閉症の兄を持つ男の子と、母を亡くし、父が家出中という女の子の2人が、それぞれの想いを語りながらストーリーを進めていきます。

合宿コンクールの課題曲「手紙」にちなみ、顧問の先生は、部員達に「15年後の自分」宛に手紙を書く事を提案します。

主人公の男の子は、両親から自閉症の兄の世話を一生するように言い聞かせられていて、その事についての本当の気持ちを「15年後の自分」に宛てて綴っています。

こう書くと、両親は残酷な事を言っていて、彼も自分の不運を嘆いているのかも…と、推測したくなりますが、それはそれほどでもないのです。
でも、手紙の内容は読んでいて胸が詰まります。
そしてこんな両親は「毒親」…?と、思わなくもありません。
ですが私は自分に当てはめて考えると、そうは言いきれないなと思ってしまいます。

一方、もう1人の主人公である女の子。
部活のあり方に悩み、恋愛に悩み…彼女も様々な問題を抱えています。
そして、物語の最後には、この男の子と女の子の過去と現在を繋ぐサプライズが用意されているのです。

私はこの原作を読んで映画を観て、誰かのために何かをする人間の優しさって、いいなあ…と、思いました。

あと、ガッキーは笑わなくても可愛いかったし、共演の木村文乃さんもやはり美人さんだなあと思いました。

「恋愛嫌い」 平 安寿子

再読の本です。

最初に読んだ時はラストに納得できなくて、
「それでいいのか?!」
と、思ったのですが、再読した時は、
「それもアリかも。」
と、思えた本です。

再読でラストを納得できたのは何故か?と、いう疑問があり、この本の内容を再びブログにまとめてみたいと思いました。

登場人物は、26歳、29歳、35歳の3人の独身女性です。
彼女達は職場はバラバラだけど、ランチの時間に同じカフェに集まるランチ友達です。

26歳の女性は、データ処理を請負う仕事で、いつもラフな服装でいる自然体の女性です。
趣味でブログを書き、そこで共通の趣味を持つ男性と知り合ったものの、恋愛には発展しません。
彼女はたびたび「1人で生きちゃ、ダメですか。」と、自問自答しています。

29歳の女性は、コンタクトレンズ売店で接客業をしている女性です。
一見まともですが、内面は少し変わったところがあり、恋愛においてドラマチックな展開になるのが苦手な性格です。

35歳の女性は、スナック菓子メーカーに勤める、バリキャリと言えなくもないけれど、出世欲のない「前向き嫌い」の女性です。
美人すぎて逆にモテないなんて、贅沢な事をぬかしています。

彼女達の本音が詰まったランチトークは、読んでいて共感できる部分が多く、私も「恋愛嫌い」なのかもしれない…と、思いました。

そんな「恋愛嫌い」な彼女達のうちの1人が、ラストでは結婚します。
そしてその理由が、「子持ちの男性の子どもの母親になりたいから。」です。
これが私が最初に読んだ時に納得できなかったところです。
「結婚って好きな異性同士が結婚するものじゃないの?!」と思っているからです。
ですが、今では「それもアリかなあ…。」と、思えます。

最初に読んだ時と再読との間に一体何があったのでしょうか?
こうして振り返ってみても、やっぱり分かりません。
でも、本の内容についての理解は深まったかなあとは思いました。
f:id:jyunko5jyunko5:20200923103115j:plain

「受験脳の作り方」 池谷裕二

「受験脳の作り方」。
なんとも気になるタイトルの本があったもんだと思いました。

けれども私がこの本を読んだきっかけはタイトルに惹かれたからではありません。

この本の著者さんの、他の本を何冊か読んだ事があって、その内容がとても分かりやすく読みやすかったからです。

そしてこの本もそうです。

タイトルから連想するような、
「受験を上手く乗り越えるための画期的な方法」が書いてある訳ではありませんが、
「記憶を定着させるためには脳科学ではこうすると良いと考えられている」というような、間接的な形で受験に役立つ内容です。

学生さんから寄せられる質問に著者さんが答えるコーナーがあったり、受験には関係ない脳の仕組みについての解説などもあったりします。
例えば、

人は何故恋をするのか?

というものです。
私にとってはなかなか興味深い内容でした。

そしてちょっとびっくりしたのは、この本の著者さんが、掛け算の九九を覚えていないという事です。

足し算と引き算で掛け算の答えを導き出すのだそうです。
そんな人でも…と言うか、そういう人だから脳科学者さんになったのかな?と、思いました。

この本は、受験に限らず日常生活にも役立つ事が書いてあるので、私でも楽しく読み進める事ができました。

「豊穣の海」 三島由紀夫

今年は三島由紀夫さんが亡くなってから、ちょうど50年たちます。

そういった想いもあって、この本の感想を書いてみたいなと思いました。

第一巻から第四巻までのこの長い物語は、本田繁邦という人物が、人生をかけて見つめる「転生」の物語です。

第一巻「春の雪」は
爵位を持つ人達の暮らしぶりが描かれています。
庶民の私から見て、今の日本とはかけ離れた
「一体どこの世界の話ですか?!」
と、思える程の優雅な暮らしぶりです。

けど、そんな暮らしをしている人は、やっぱり生きる事に対して甘いんだなあという感じがしました。
登場人物である20歳の若者は、悲恋のうちに亡くなるのです。

この巻の中で私が1番印象に残ったのは、美しい恋人同士が人力車で雪見見物をする場面です。

私にこんな経験があったとしたら、それを一生の思い出として大切にできる程の美しい場面だと思いました。


第二巻「奔馬」は、古い時代の精神を捨てきれず、世の中の腐敗を見過ごせない若者の物語です。

今の日本人には無駄にしか思えない精神ですが、彼の真っ直ぐな生き方は、清々しく美しいです。
とはいえ、そこまで頑張らなくてもいいのでは?…と、思いました。


第三巻「暁の寺」は、なんだかよく分かりませんでした。

タイのお姫様のお話なのですが、彼女の個性が見られないからです。

それより、彼女の国にまつわる仏教について深く考えさせられる内容でした。


第四巻「天人五衰」は、長い物語の終わりを告げるような内容です。

これまでの内容が現代の日本からかけ離れているのに対して、いかにも現実的で登場人物の若者の酷薄さが目立ちます。


この、第一巻から第四巻までの長い物語を通じて私が思った事は、三島由紀夫さんは少し変わった方だなあという事です。
けれども、この作品をキッチリ書き終えてから自決に向かった生真面目さには好感がもてます。
自決するような人が書いた作品には思えませんでしたけど。