Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

「運のつき」 養老孟司

解剖学者、養老孟司先生の本です。

この本は、先生が解剖学者になった経緯や、ご自身の経験、普段考えてる事などについて書いてあります。

解剖学者は言うまでもないなく死体を解剖する仕事です。

そうなると「死」は遠いものではなく、日常的なものになるみたいです。

私などは「死体」は怖いと考えがちですが、
誰でも必ず死ぬ訳ですし、私自身も必ず死体になるのです。
たとえ明日死ぬ事になったとしても、早いか遅いかだけの違いで、大した事ではないのかも…と、考えを改めさせられました。

養老孟司先生は、昭和33年、東京大学医学部に入学されてから教授となり、28年間ずっと大学に通われていたそうです。
そして、大学では全共闘運動を経験し、その事を今でもずっと考えてると書いてありました。

それは、先生について私の持っていた「不要なものをバッサリ切り捨てる方」というイメージを変えさせるものです。

日常を選ぶ事、対象ではなく方法を選ぶ事、気になる事は長い間ずっと考えてしまう事などから、養老孟司先生は真面目な方なのかもしれないと思うようになりました。
そして、つくづく虫が好きなのだなあ…と。(^^)

この本に書いてある事は、ちょっと哲学的です。
読んでる最中は納得していても、じゃあそれを説明しようとなると、それはちょっと難しいなあと思いました。

「つんつんブラザーズ」 森博嗣

この本は、森博嗣さんの100のエッセィが詰まった本です。

文庫書下ろしなので、ちょっとだけ最近の話題かな?…みたいな…、例えば、「老後資金二千万円問題」や、「1人で死ねばいいのに問題」などについて書いてあったりします。

他には、
「毎日RITHというお菓子を食べている」みたいな、どうでもいい話、

また、
「『自分』とはどういう意味なのか?」と、いった、難しい問いかけのような話題もあります。

読みながら、「目からウロコだ!」と、思ったり、「私もそう思うわ…。」と、思ったり、「それはちょっと違うのでは…?」など、いろいろな事を思ったりします。

でもやっぱり、「森博嗣さんは面白い事を思いつく人だなあ。」と、いうのが1番に思う事です。

エッセィに限らず、小説でも何でも、本を読んでいて度々思う事は、作家さんの魅力が文章の中に溶け混んでいるなあ…と、言うことです。

この「つんつんブラザーズ」は、森博嗣さんという作家さんの魅力が特に濃く溶け混んでているような感じのする本です。

「ほろにがいカラダ」 藤堂志津子

この本は「桜ハウス」という作品のシリーズです。
と言っても、それぞれ独立したストーリーなので、前作を読んでいなくても楽しめます。

登場人物は「桜ハウス」に住む女性達です。
それぞれ年齢はバラバラで、独身やシングルマザー、バツイチなど、生き方もさまざまです。

この本は、そんな女性達たちの、それぞれの恋愛ドラマで構成されています。

この、「桜ハウス」の大家である蝶子さんは50歳の女性です。
12歳年下の既婚男性と、かなり特殊なお付き合いをしています。
そんな蝶子さんの恋愛ドラマは切ない結末を迎えます。
そして蝶子さんは、その恋愛話を誰にも話さず、美味しいゴハンを作ってはそれを食べたひとに、
「嬉しい。大好き。」と、言われる事に癒されているのです。

私は、そんな彼女の気持ちが切ないくらい分かります。

「桜ハウス」に住む女性達は、みんな変わった恋愛をしています。
熟年の恋愛ごっこやセフレのような関係、そして不倫です。
その割に、恋愛ドラマにありがちな、感情的な描写は少ないです。

本書もそうなのですが、この作者さんは、どこか物事を俯瞰しているような作品が多く、
そんなところが私にはとてもしっくりくるのです。
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「ついに、来た?」 群ようこ

この本は、8つの短編からできている本です。

全て親の介護をする娘目線のエピソードであり、なかなか感慨深いものがありました。

最初の短編「母、出戻る?」は、53歳の母親が、家出をして好きな男性の所へいってしまうという仰天のエピソードです。

2つ目の短編、「養父、探す?」は、優しかった養父が老齢になり、認知症の症状がでてくる話です。

3つ目、「母、歌う?」は、歳をとって健康でいられるのは大切だなあと実感させられる話です。

4つ目、「長兄、威張る?」は、複数の人達で介護を分担する話で、
5つ目、「母、危うし?」は、離れて暮らす主人公の母親が、悪い人に騙されかける話です。

6つ目、「叔母たち、仲良く?」では、老齢である主人公の叔母さん2人についての話。
架空の豆の煮物の事でケンカをする2人の叔母さん達が、なんだか可愛いなあと思いました。

7つ目、「母、見える?」では、夫に浮気の上離婚され、反抗期の息子と認知症になり始めた母親を持つ女性の話。
息子に「くそばばあ」と言われ、「ばばあではあるが、くそではない。」と冷静に反論するこの女性は偉いなあと思いました。

最後、8つ目の「父、行きつ戻りつ」では、現役で働くしっかりものの男性が、老齢でちょっとおかしな行動をとるようになる話。
2人の娘さんや会社の部下の人たちが、男性に気を遣いながらあたふたと対応する所が面白く、ほっこりするところがありました。

全編を通して淡々と語られていて、重くなりがちな介護の話を面白くさせているところが、流石、この作者さんだなあ、と、思いました。

私も、自分が介護する側になってもされる側になっても、優しい気持ちを忘れないでいられたらいいなあと思いました。

魔が解き放たれる夜に メアリ・ヒギンズ・クラーク

数日前の事ですが、アメリカの作家、メアリ・ヒギンズ・クラークさんの訃報が届きました。
92歳でした。

「サスペンスの女王」と呼ばれ、多くの作品を世に残した方です。

この「魔が解き放たれる夜に」という作品もそのうちのひとつです。

この物語の主人公であるエリーは、姉を殺した殺人犯の仮釈放を阻止しようとします。

それは誰もが無理だと言い、エリー本人ですら無理だと思っている事です。

でも、彼女はやらない訳にはいかないのです。
その犯人はとても凶悪で、世に出てきたらまた誰かを傷つけるに違いないと考えられるからです。

果たしてエリーの考えは合っているのか?
殺人犯を追い詰める事ができるのか?
…てなところがこの本の読みどころかなと思います。

そして、何者かに命を狙われるエリーには最後までハラハラさせられます。

メアリ・ヒギンズ・クラークさんは、
読者をどんどん物語の中に引っ張っていき、最後まで飽きさせない事のできる作家さんです。

この作品では、エリーの頑固さもまた読みどころかなと思います。
ヒギンズ作品では初めての一人称だそうですが、それは、読者に主人公の気持ちを身近に感じて欲しいという、作者の思いからかもしれません。

エリーは一見、頑固で無謀な事をするように見えますが、子どもの頃の後悔や、家族がバラバラになった悲しさ、卑劣な犯人に対する怒りなどを身近に感じられると、彼女の行動も理解できると思います。

メアリ・ヒギンズ・クラークさんの作品を読んでいていつも思う事なのですが、ヒロインはみんな、綺麗だったり聡明だったり、素敵だったりカッコ良かったりする大人の女性です。
でも、近寄り難い印象はなく、どこか親近感が持てます。
そして「こんな友達がいたらいいなあ。」と、感じさせるのです。

ヒギンズさんもきっと
まわりの人間に対して、優しい気持ちで暖かく接しておられた方なのだろうなあ…と、思いました。

改めて、ご冥福をお祈り致します。

鷹の王 C・Jボックス

前回、「狼の領域」という本のブログを書いた時、大切な登場人物の事を書き忘れた!…と、思いました。

それがこの小説の主人公、ネイトです。

ネイトは普段、「ジョー・ピケットシリーズ」の中では、「謎の組織に追われているために隠れて暮らし、ジョーが困っている時には手を貸してくれる人物」と、いう役どころです。

例えて言うなら、「水戸黄門」で言うところの「風車の弥七」みたいな…。(例え古…💦)

そんな、とっても強くて頼りになる存在です(^^)

 

ところで、何故この本のタイトルが「鷹の王」なのか?と、言うと、

それは彼が鷹匠だからです。

そして本書には、彼が鷹匠になった理由…、彼が謎の組織に追われている理由…などが書かれています。

 

その謎の組織は、今までの敵とは全く異なる本物のプロです。

なので、ネイトの大切な人々に危険が迫っている場面は本当に迫力がありハラハラします。

もちろんジョーも例外ではありません。

なのに彼は逃げないんですよね…

相変わらずというか頑固というか…

そんなジョーを説得する時のネイトのセリフはとても印象的です。

ネイトが本心をここまで明かしたことは今までにないからです。

 

この小説は、シリーズのファンにとっては待ち望んでいた書ではありますが、はじめて読む読者にとっても、ネイトというキャラクターの魅力やアクションの迫力は十分に伝わるものだと思いました。

そして、彼等の強い絆も…(^^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狼の領域」 C・Jボックス

この本は、アメリカのベストセラー、「猟区管理官ジョー・ピケット」シリーズのうちのひとつです。

シリーズと言っても1話完結型なので、
「最初の作品を読んでないからわかんない!!(>人<;)💦」…なんて事にはなりません。

実際私はこの、9作目の作品をはじめて読んで、
「凄いなあ!(✪▽✪)✨」と、感動したのです。
なので、シリーズのどの作品から読んでも全然OKだと思います。

それでは、この9作目にあたる「狼の領域」について、
一体どんなところを凄いと思ったのか、私なりに語っていきたいと思います。

主人公ジョー・ピケットは「猟区管理官」という、ちょっと日本では聞きなれない仕事をしています。
これは、狩猟に関する違法行為を取り締まる仕事です。

その中で彼は、大自然の中で暮らす、ある複雑な過去を持つ兄弟を取り締まらなければならない立場に立たされます。

その兄弟は人間として間違った事をしている訳ではないのですが、国の決めた法律を犯しているのです。

彼等はジョー・ピケットに対して「政府側の人間」と、言います。
それに対しジョー・ピケットは、「政府側の人間ではない。野生生物側の人間だ。」と、考えます。

そんな真面目なジョー・ピケットなので、彼等に真摯に立ち向かうのです。
その結果、「もうこれは刺し違えるしかない!」とまで追い込まれ、
圧倒的に自分より強いと思われるこの兄弟に負ける事まで予測し、死を覚悟します。

ジョー・ピケットは、ヒーローでも何でもない普通の男なのです。

このシリーズは、全編通して大自然の描写の素晴らしさと、主人公の、「不器用で真面目な男」と、いうキャラクターがストーリーの基本にあり、それが話を面白くしていると思います。

特にこの「狼の領域」では、死を覚悟した主人公の、考える事や感じる事には神聖さすら感じます。
その事を私は凄いと思い、深い感動を覚えるのです。

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