数日前の事ですが、アメリカの作家、メアリ・ヒギンズ・クラークさんの訃報が届きました。
92歳でした。
「サスペンスの女王」と呼ばれ、多くの作品を世に残した方です。
この「魔が解き放たれる夜に」という作品もそのうちのひとつです。
この物語の主人公であるエリーは、姉を殺した殺人犯の仮釈放を阻止しようとします。
それは誰もが無理だと言い、エリー本人ですら無理だと思っている事です。
でも、彼女はやらない訳にはいかないのです。
その犯人はとても凶悪で、世に出てきたらまた誰かを傷つけるに違いないと考えられるからです。
果たしてエリーの考えは合っているのか?
殺人犯を追い詰める事ができるのか?
…てなところがこの本の読みどころかなと思います。
そして、何者かに命を狙われるエリーには最後までハラハラさせられます。
メアリ・ヒギンズ・クラークさんは、
読者をどんどん物語の中に引っ張っていき、最後まで飽きさせない事のできる作家さんです。
この作品では、エリーの頑固さもまた読みどころかなと思います。
ヒギンズ作品では初めての一人称だそうですが、それは、読者に主人公の気持ちを身近に感じて欲しいという、作者の思いからかもしれません。
エリーは一見、頑固で無謀な事をするように見えますが、子どもの頃の後悔や、家族がバラバラになった悲しさ、卑劣な犯人に対する怒りなどを身近に感じられると、彼女の行動も理解できると思います。
メアリ・ヒギンズ・クラークさんの作品を読んでいていつも思う事なのですが、ヒロインはみんな、綺麗だったり聡明だったり、素敵だったりカッコ良かったりする大人の女性です。
でも、近寄り難い印象はなく、どこか親近感が持てます。
そして「こんな友達がいたらいいなあ。」と、感じさせるのです。
ヒギンズさんもきっと
まわりの人間に対して、優しい気持ちで暖かく接しておられた方なのだろうなあ…と、思いました。
改めて、ご冥福をお祈り致します。