小池真理子さんは昔から好きな作家さんです。
昔はミステリー、その後、恋愛小説へと作風が変わったなという印象が強いのですが、
この「死の島」という小説は、そのどちらでもありません。
「死」に直面した人間の心理を深く追求した小説です。
小池真理子さんの小説は、ミステリーでも恋愛小説でも、心理描写の巧みさやストーリーの進め方の上手さは変わらないので、どんな作風でも読み応えがあります。
この「死の島」という小説は、
末期ガンの主人公が病気を理由に講師の仕事を辞め、生徒だった若い女性と親しくなり、そして亡くなる、というストーリーです。
この主人公と若い女性はどこまでも講師と生徒であり、恋愛とはほど遠い関係です。
私は、女性が若く生命力に溢れる一方で、主人公は死に向かう老人であるところになんとも言えない寂しさを感じました。
白石一文さんがこの小説の解説を書かれていましたが、白石さんも小池さんの小説がお好きなのだなあと感じられ、解説の内容に好感が持てました。
解説の最後に、この小説を上梓した直後に、小池さんは夫の藤田宜永さんが末期ガンである事を知らされた、と書いてあり、
順番が逆だと思っていた私は、
そうだったのかと、不思議な気持ちになりました。