Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

「孫と私の小さな歴史」 佐藤愛子

最近テレビでは戦争と疫病のニュースばかり…。

そんなニュースばかりの気が滅入る毎日を少しでも癒そうと、近所にある「本の貸し出しを行う施設」に、行ってきました。

「図書館」…ではないんですよ。

まあ、細かい事はさておき、その施設内にある貸し出しコーナーで、本棚に並べられている本を前に私は、

『内容的には何の役にも立たず、むしろバカバカしいとさえ感じられるもの。そして、文字の並びに余裕があり、すぐに読み終われるようなもの。』

…と、いう条件をつけて本をさがしました。

そうして見つけたのが佐藤愛子先生の、

「孫と私の小さな歴史」

と、いう本です。

先に“何の役にも立たない"だの、“バカバカしい“だの、大変失礼な事を述べてしまい、大変申し訳ないです🙇‍♀️💦

ですがそのバカバカしさは、その時の私の精神状態にとってはとてつもなく尊いものだったのです。

一体全体、この本がどんな内容だったのかと言うと、

佐藤愛子先生とお孫さんが約20年間に渡り、おかしな扮装をした写真を撮って、それを年賀状にした記録です。

なんかこの説明ちょっとヘンかもしれない…。

本の内容についてさらに補足すると、面白おかしい写真と、その写真を撮った時の状況や経緯など、さらにお孫さんについての事などが書かれています。

写真は見ているだけで楽しいし、関連する文章もとても楽しく、

お孫さんがそれらの写真について、「おばあちゃんと私の成長記録」と、言っていたのが印象的でした。

少し明るい気持ちになれました。

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「朝が来る」 辻村深月

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望まない妊娠によって出産した女性と、その女性が産んだ子どもを養子として迎えた女性の話です。

辻村深月さんの本を読むのはこれが2冊目。

最初に読んだ本でも感じた事なのですが、

辻村深月さんという作家さんは、小説を書く上で、関連する出来事について事前に細かく調べ、またそれを的確に表現する力のある作家さんだと感じました。

この小説の中で、幼稚園や子ども同士のトラブルについて、「あるあるこういう事。」と、思わずうなずいてしまうような場面がありますが、そういう部分に先程述べた、この作家さんの努力や才能を感じました。


小説の内容に話を戻します。

この小説は2人の女性が主人公です。

子どもを産んだ女性とその子どもを養子として迎えた女性です。

前半は養子を迎えた女性を中心に、子育ての難しさや養子を迎えるまでの経緯などが描かれています。

その次に、養子の母親である若い女性について、妊娠に至った経緯や心情などが描かれます。

そして、読み進むうちに前半を読んで思った事のひとつひとつが覆されていきました。

女性として生きる難しさを描いてはいるけれど、悲観的ではなく、最後には希望が見える終わり方をするところに好感がもてる小説でした。

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「夏への扉」 ロバート・A・ハインライン

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普段ほとんどSF小説を読まない私ですが、なんとなく惹かれるものがあり購入した本です。(2020年12月発行のハヤカワ文庫SF)

そして、あとがきや解説を読み、この作品が多くのSF小説ファンに愛され続けてきた事や、

表紙の絵が作品のイメージにピッタリなところに、何か心が暖かくなりました。

本というものは、多くの人々の想いがあって、こうしてひとつの作品になるのだなあ…と。…( ˘͈ ᵕ ˘͈♡)


前置きが長くなってしまいました(>_<)💦

肝心の本の内容はというと…、

主人公が冷凍睡眠で30年間の眠りにつくというタイムリープものです。

波乱万丈で、謎もあればロマンスもありという、盛り盛りの濃い内容になっていると思います。

読みながらいろいろな感情を味わう事ができて、退屈しませんでした。

さらに個人的な事を言えば、主人公が物を作るのが好きなところや、相棒の猫をとても大切にしているところに好感が持てました。

主人公は、親友にも恋人にも裏切られて大切な財産も失うけれど、そんな困難を乗り越えて最後には幸せになります。


タイトルの「夏への扉」は、

冷凍睡眠から目覚めるという事の隠喩かな?
とか、いろいろな事を想像させられ、深い意味があるような印象を受けました。


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「私をくいとめて」 綿矢りさ

主人公は、「ギャル」になれるほど若くはなく、「おばさん」というほどでもない、微妙な年頃の独身女性です。

性格的に少し怖がりなのかな?と思えるところがあり、普通とちょっと違うところがあります。

それは、自分の頭の中にいる別人格と脳内で会話をするところです。

ですが異常というほどではなく、正常の範囲内のようです。

物語そのものに大きな事件などはないのですが、主人公が海外旅行に行ったり、ディズニーランドに行ったり、会社での親しい同僚と会話をしている場面は楽しそうで、言うほど人が苦手そうではなく、


「なんだ普通じゃん。」


と、言いたくなる気持ちになります。

でも実はそこがこの小説の良さなのかなと思いました。

みんな自分のダメな部分をクローズアップしがちだけど、実際まわりの人から見たら、それはそんなダメでもなく、

この主人公に限って言えば、悩みがあってもそれなりに毎日を楽しむ事のできる健全な女性だと私は思いました。

そして読了後には、主人公が体験したクリスマスのイタリア旅行やディズニーのダブルデートなど、まるで自分が体験した事の思い出のような、ワクワクした気持ちが残りました。

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パンとスープとネコ日和「今日もお疲れさま」 群ようこ

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今回は(私にしては)いつもよりちょっぴり長めの、気合いの入ったブログです。

…いや、いつもテキトーという訳ではないのですが…(^_^;)


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この小説は、1話完結型のシリーズ「パンとスープとネコ日和」の、5作めの作品になります。

主人公は、スープとサンドイッチのお店を営むアキコさん。

そして、お店の従業員しまちゃんと、そのパートナーのシオちゃん、向かいの喫茶店のママさんなどが主な登場人物です。

シリーズ作品は、読者が登場人物を身近に感じるところに良さがあると思います。

私はそういう小説を読むと、まるでよく知った…、でも、しばらく会っていない友達の近況報告を読んでるみたいな感想を持つ事があります。

この場合、アキコさんが私の友達という事になるのでしょうか。

…なんて考えながら、本当にアキコさんみたいな友達がいたらいいなあと思ったりします。

彼女は、芯がしっかりしているけれども、控えめで心優しい女性です。

例えば大変な時は無理せずに休み、お店で提供するスープとサンドイッチはテイクアウトにしないという考えに、まわりに流されないしっかりした性格の持ち主である事を感じます。

それでいて、お世話になっているパン屋の奥さんが腰を痛めたと聞くと、まるで我が事のように心配するところに優しさを感じます。

従業員のしまちゃんに対しては、「頑張らなくていいのよ。」と、気づかったりもします。

しまちゃんは学生時代、ソフトボールの強豪校で万年補欠だったという、しょっぱい過去を持つ、元気で働き者の女の子です。

パートナーであるシオちゃんとは事実婚です。

しまちゃんは、シオちゃんに対して冷たいのですが、アキコさんは2人の仲を心配しつつも、自分が思った事を控えめに言う程度で、でしゃばるような事はありません。

そして、しまちゃんもとても素敵な女の子です。

シオちゃんに冷たいのは、「甘やかさない」と、いう考え方からのようで、自分にも身内にも厳しい彼女だからこそかな?と、思われます。

けれども、さすがにこれはやりすぎでは?…と、思えるくらい、シオちゃんに対して冷たい時もありますが、私はなんとなくしまちゃんの気持ちも分かるので、

もしかしたら、自分も彼女と似たようなところがあるのかもしれないな、と、思ったりします。

向かいの喫茶店のママさんは、お店の経営者としても人生の先輩としても、アキコさんを見守ってくれてる存在です。

すぐお店を休みにするアキコさんに、ひやかしの言葉を言ったり、ちょっと言葉がきつい時もあるけど、本当はアキコさんの人柄に好感を持っていて、何かと助けてくれる人です。

この小説を読んでいると、特に有名でもない普通の人でもいろんな人がいて、いろんな出来事があるんだなあとしみじみ思います。

アキコさんとしまちゃんの、気心がしれているようで、それでいてお互いを気遣うような会話には、2人の心の美しさを感じて涙が出そうになるほどです。

あと、タイトルにある通り、ネコがちょいちょい出てくるところにはほのぼのさせられます︎。

読むたびに心がホッと暖かくなる…。
そんな小説です☺️☕𓈒𓏸︎︎︎︎


#パンとスープとネコ日和

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「ゴールデンカムイ」 野田サトル

9月20日まで「となりのヤングジャンプ」で無料公開していた「ゴールデンカムイ」。

北海道を舞台にしたこの壮大な物語は、函館出身の私にとっては特に胸に刺さるものでした。

ストーリーのざっくり説明をすると、

日露戦争からの帰還兵、杉元佐一とアイヌの少女が手を組んで、網走監獄から脱獄した囚人たちの背中に彫られた埋蔵金の在処を示す刺青を集めて一攫千金を狙う物語です。


登場人物には囚人や軍人が多く、基本的に「頭のおかしな人」ばかりだな…と、思いました。

また、史実を元にした仰天エピソードは、

「いや、まさかそれはないっしょ💦」

と、思わず北海道弁でツッコミを入れたくなるところもありましたが、

「漫画だしフィクションだしギャグだし。」

と、思いながら、あまり深く追求せずに楽しめました。

とはいえ、そんなふざけた内容ばかりではなく、アイヌが大切にする「カムイ」を知る事で、私たち日本人が忘れてしまった大自然への畏敬の念について考えさせられたりもします。

ストーリー全体を通してみると、

埋蔵金を見つけ出すために昨日は敵だった者と手を組んだりの心理戦や、仲間の裏切り、囚人たちの不幸な生い立ちなど、見どころは盛り盛りだと思います。

血なまぐさい戦闘シーンも多いけど、それは大切な人たちの暮らしを守るためで、違う民族とも、お互い協力し合う事の大切さについてのメッセージが込められていたように思えます。

「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」 佐藤愛子

初めて佐藤愛子先生の作品を読んだのは、中学生くらいの時です。

もう題名などは忘れてしまったのですが、日常の出来事や、憤怒の体験などを面白おかしく綴ったエッセイでした。

それ以来、佐藤先生の本を度々読んでいます。

初めて読んでから、考えるともう、かれこれ30年以上になります。

長いなあ…と、思ったら、佐藤先生も(もうすぐ)九十八歳なのだとハッとしました。

本書「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」は、そんな佐藤先生の年齢を感じさせるエピソードが満載でした。

ご自身の体調の事、病院での出来事。

そして、子どもの頃の思い出などに関しては、今の日本とはかけ離れた、歴史上の出来事のような、不思議なノスタルジーのようなものを感じました。

とはいえ、そんなぬるい事ばかりが書かれている訳でもありません。

一瞬、若い頃の佐藤先生が戻ったような、鋭い文章に出会ったりします。

例えば、
「こんにゃくに「お」なんかつけるな!」と怒ったり、
虐待で我が子を死なせた父親の事を
「この父親はヘンタイである。」
と、きっぱり言い切ったりなどがそうです。

やはり佐藤先生は佐藤先生だなあと思ったりします。

ただやはり、お歳はお歳です。

この本の結びの言葉、
「みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷り去ります。」には、

本当に

これでさようならは寂しいなあ。

…と、思いました。

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