Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

「若くない日々」

藤堂志津子さんという作家さんの本です。

「若くない日々」。

これ、妙齢の女性にとっては、なんとも切ないタイトルです。

この本は、5つの短編からできています。

タイトル通り、主な登場人物は「若くない人」です。

年齢でいうと50代。

これは、若年から老年への転換期…そんな揺れ動く世代なのです。

そんな世代の人たちが感じる、さまざま出来事が描かれています。

私は、「ドリンカー」という短編の主人公が、厭世的な気分になった後、吹っ切るように「仕方ない」と、言うのが強く印象に残りました。

人に親切にするのに「仕方ない」と、言うのです。

若い人なら人に親切にするとき、「〜しなくちゃ!」と、言うところを、若くない人は、「仕方ない」と、言うんだなあと思ったのです。

他にも、歳を重ねるのは、「余分なもの」を抱え込む事だと気付いたり…、忘れてた過去の出来事を思い出して感慨にふけったり…。

この本の内容は、どれもこれも若くない自分が共感できるものばかりでした。(まだ50代ではないけれど)

そして、「若くない日々」を、よりよく過ごすヒントをみつけたような気がして、読み終わった後、安堵に似た気持ちを覚えました。

 

 

 

 

「愛にもいろいろありまして」 平安寿子

最近の若者は恋愛してるのかな?と、思う。

最近の若者は、賢いし、恋愛以外の娯楽もいっぱいあるし、異性よりも自分が好きそうだし…。

だから
恋愛についての本なんて、読まないかもしれないと思った。(本じたい読まないのかも…?)

この「愛にもいろいろありまして」という本は、7つの短編からできていて
その短編ひとつひとつを読むと、その名の通り「愛にもいろいろなあるんだなあ…。」と、考えさせられる。

それは、男女の恋愛ではなく、もっと広い意味の愛だったりする。

登場人物は、少し変わった人が多い。
そして、その中でも特に私が印象深いと思った人物が5人いた。

1人目は、好きな男性から頼まれた事を、好きな男性よりも大事と思ってしまうようになる女性。

この女性は、恋愛で得るものよりも大切なものを手に入れたのかもしれないと思った。

2人目は、昔はロックミュージシャンでカッコ良かったけど今はそうではなく、自分の娘をふざけた名前で呼ぶ男性。

アレコレ考えて前に進めない娘を、根拠のない言葉で力強く後押しする男性に頼もしさを感じた。

3人目は、躊躇なく、何人もの難あり男性と関係を持つ女性。理由は「可哀想だから」。

ちょっと見た目問題について考えさせられる短編。

この女性の生き方は、それはそれで良いと思えるものだった。

4人目は、ストレートの男性に恋をするゲイ。

ゲイというマイノリティーであるゆえにか、恋愛についての姿勢は潔いと思った。

5人目は、お舅さんの介護をしていた若いお嫁さん。

優しいというより、無邪気な性格で介護を乗り切ったお嫁さんが可愛くて良かった。

この5人の人達は、賢くはないかもしれないけれど、賢い人よりもスゴいんじゃないかと思わせる何かがあった。

この本は、登場人物の個性によって、おかしな方向へ展開するストーリーと、全編やり切った感満載の清々しい終わり方をするところが良かった。

心をえぐる言葉がちょいちょい出てくるので、多くの人に読んでもらいたいと思った。

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森博嗣さんのエッセイ

先日、書店で「つぼやきのテリーヌ」と、いう本を購入しました。

森博嗣さんのエッセイは、ちょっと前から読んでみたいなと思っていたのです。

本を手に取って最初に思った事は、1〜100まで見出しがあって、きっちり2ページずつ文章が続いているのは、読み手にとっては読みやすくて良いなあという事です。

一方、本の内容について心に強く残った事はびっくりするほどありませんでした。
それは、私自身の問題なのか本の内容が理由なのかはよく分かりませんが、半々といったところではないかと思います。

心に強く残った事はなくても感想くらいはあります。

それは
「さっぱりとしていていて発想がおもしろい。」と、言う感想です。

森博嗣さんの小説は、2冊読んだことがあるのですが、小説を読んだ時にも同じような感想をもちました。
ご本人のお人柄なのでしょうか。

とはいえ、心に残った事も少しくらいはあるので、それについて書いてみたいと思います。
見出しの番号と合わせて書いていきます。

41.モグラというものはとても身近にいるのに
姿を見た事はない、というのは不思議だなあと思いました。

68.微妙と言う言葉の使い方、私はいつも間違えていたんだなあと思いました。

81.謝罪の気持ちをお金に換算するといくらか?なんて言われて、大抵の人が言葉につまるのは当たり前だけど、謝罪する側の人が、感情抜きに自分のミスの適正価格をどう見積もるのかは興味深いなあと思いました。

まあ、ざっと上げるとこのくらいです。
心に残った事は大して無くても、発想がユニークなのでたまに読み返してみたくなる本です。
こんなふうに言うと全然褒めてないように見えますが、そんな事はありません。
私はこの本、好きです。

最後に、解説についても少し書きたいです。
解説は、もと「Berrz工房」の「ももち」こと、嗣永桃子さんが書かれています。
テレビでみた感じのままなのですが、素直で新鮮味があり、私は悪くないと思いました。
でも、ハートマークの乱用はヤメロと思いました。

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「弁護側の証人」という本のこと

最近推理小説を読まなくなった私がこの本を手に取ったのは、たまたまです。
裏表紙に書いてあるあらすじをざっと読んだ時、「なんだか良さそう…。」と、感じたからです。
そして、その予想は当たっていました。

この、「弁護側の証人」が書かれたのは、昭和30年代。著者は現在すでに亡くなっています。
そのせいか、文章のそこかしこに古臭さが感じられ、けれどもそこがレトロな感じで、この作品の魅力にもなっていると思います。
読み終わったあと、もう一度、あらゆる場面での文章を確認せずにはいられなく、してやられた感でいっぱいでした。
この本のオビに書いてある、「映像化絶対不可能」と、いう言葉にも「だよねー!」と、相づちを打ちたくなります。

こんな私の感想、なんのことやらサッパリ…と、思いつつ、少しでも興味を持たれた方は、この文庫を手に取って、ご自分の目で確かめてみて下さい。
ぜひぜひ(^^)

 

図書館で借りた本のこと

先週の水曜日、図書館へ行ってきました。
図書館を利用するのは久しぶりです。
この日借りた本は全部で4冊。
なんとなく目についた本を気軽に借りてみた、というところです。
返してしまう前に、一冊ずつ、読んだ感想などを記しておこうかなと思いました。

1冊めは
「ロシアの大人の部屋」(辰巳出版)という本です。
この本はまんまロシアの一般家庭のインテリアを紹介したものです。
オシャレな部屋の写真がメインで…まあ、見て楽しむものですね。
日本では、ミニマリストといった、「物を少なく心を豊かに」といったライフスタイルが注目されましたが、この本はどちらかというとその逆です。
多くの雑貨やインテリアを楽しむ事を紹介する本です。

ロシアの人々が棚の上にマトリョシカを並べたり、キリストの絵画を飾ったりするのは、日本でいったら、招き猫やダルマを箪笥の上に置いたり、お釈迦様の絵を飾ったりする事と一緒なんだろうけど、何でこんなオシャレなのかが不思議でした。

たくさん雑貨があって、カーテンや壁紙やシーツも奇抜な色や柄なのですが、部屋全体がまとまって見えるのは、ロシア人には日本人が持ち合わせていない、センスの良さを持っているからだと感じました。

二冊めは
「ワイン&チーズ バイブル」(日本文芸社)という本です。
これもまんまワインとチーズの事を紹介する本です。
ワインの事をよく知らない私にとっては基礎的な事を学べる本でした。
例えば、カベルネ・ソーヴィニヨンがぶどうの品種の事だとか、ボトルの形でワインの産地が分かるという事などは、常識なのかもしれませんが、私は知りませんでした。

チーズについても同様です。
チーズにできる穴をガスホールという事や、チーズの種類や、カビとチーズの関係などが、分かりやすく説明されていました。

でも本当は、そういう知識を学べる文章よりも、美味しそうな写真や説明文がいっぱいあったところが気に入って借りたのです。
チーズを使った美味しそうな料理の写真や、このワインにはこのチーズが合うといった簡単な説明文とかです。
この本を見つけた時、お腹が空いていたのかも…。

この本を返してしまったら、ワインやチーズについての知識はすっかり忘れてしまって、美味しそうだったなあ…という印象しか残らないのではないかと思っています。

3冊めは
平安寿子さんの「あなたにもできる悪いこと」という本です。
気軽に読める、私が好きな作家さんの本です。
主人公は、詐欺や恐喝スレスレのような仕事をしている男性で、彼が商売相手に仕掛ける心理戦が面白く、偽善的な世の中を俯瞰しているような、小気味よいお話でした。

4冊めは
藤堂志津子さんの「かげろう」という本です。
藤堂志津子さんは、札幌在住の作家さんなせいか、北海道の人特有の何かを感じさせる部分があって、そういうところがいいなあと思うのです。

この本は、3つの短編からなっています。
最初の「かげろう」という話は、人って見かけによらないんだなあ…という事を、しみじみ思い知らされる内容です。
主人公の未亡人の女性に、「そんな簡単に他人を信用しちゃだめだよ!」って、言いたくなります。
驚きの結末だけど、納得かなあ…と、思ったりしました。

次の「あらくれ」は、小料理屋を経営する中年女性が主人公で、健全な社会から少し距離を置いて暮らしている感じの人たちの話です。
胸を張れるような生き方ではないけれど、来るものを拒まない流されるような生き方は、ほんのりとした優しさを感じて好感が持てます。

最後は「みちゆき」という話です。
前述の2つの話より、インパクトは弱い感じですが、いろんな人生、いろんな考え方があるんだなあ…と、しみじみ思えてしまう、感慨深い話です。

以上の4冊、どれもそれぞれ面白いものでした。
返さなければいけないのは残念ですが、もらっちゃうとかは駄目なので、ちゃんと来週返しに行こうと思っています。

 

 

「冬子の兵法 愛子の忍法」という本について

お正月に主人の実家へ遊びに行った時、お義母さんから本を何冊かお借りしました。
その中のひとつに「冬子の兵法 愛子の忍法」という本があったので、今回はこの本についての感想を書きたいと思います。

この本は、佐藤愛子先生と上坂冬子先生の共著であり、お二人の往復書簡をまとめたものです。
そういった内容のせいか、「佐藤先生の番」と「上坂先生の番」とで気持ちの切り替えができて、私にとってはよみやすかったです。
話題は多岐にわたります。外交の話や戦後の日本についてなど、人生の大先輩であるお二人の文章の中には、勉強になるものがたくさんありました。
戦争についてのリアルな感想は、今の私達の考えがいかに薄っぺらいものであるかを認識させられたりもします。
上坂先生と佐藤先生は、台湾についての本を書かれており、そのあたりの話題は本当に勉強になりました。
その事についてもう少し詳しく、おひとりずつに分けて、感想を書かせて頂きたいと思います。

上坂先生は、ノンフィクションの作品をいくつか書かれている作家さんです。
その中の、「虎口の総統 李登輝とその妻」という本は、台湾でベストセラーになったそうです。
この本は、題材となった李登輝さんご本人も読まれ、その感想を、側近を通じて上坂先生に伝えられていました。

本書、「冬子の兵法 愛子の忍法」にもどります。
上坂先生は台湾の事にとても詳しく、この本の中に書かれている、李登輝さんが来日した時のエピソードなどはとても興味深いものでした。
中国の横暴さや、日本政府の弱腰な姿勢がよく分かるエピソードです。
また別の話になりますが、李登輝さんのお兄さんは日本兵として戦死しており、靖国神社に祀られているそうです。
その事について李登輝さんが「静かに参拝できる時がきたら行きたい」と、おっしゃっていたのが印象深かったです。
李登輝さんは本当に凄い人です。
多くの日本人から好感を持たれている人物ですが、その事は上坂先生の語る李登輝さんのエピソードからも納得できます。
上坂先生は正直で真っ直ぐな所があり、様々な物事に対する探究心から意欲的に行動ができる方だと思いました。
歳を重ねてそういう気持ちを持ち続けられる方は、なかなかいないと思います。
私も上坂先生を見習いたいなと思いました。

一方、もう1人の著者でもある佐藤先生も凄い方です。
最近では「九十歳。何がめでたい」という本がベストセラーになったので、ご存知の方も多いと思います。
私も佐藤先生の本はたくさん読ませて頂きましたが、全部はとても読めないだろうなあ、と思うくらい、たくさんの本を書かれています。
その中に、台湾人の元日本兵を題材にした「スニヨンの一生」という本があります。
佐藤先生もまた、この本の執筆のために台湾へ行って現地の方々に取材してきています。
その時の体験談で語られる、台湾人の素朴な人柄は、私にとってとても好感が持てるものでした。
ですが、良い話ばかりではありません。
取材の話題の中には、戦争当時の思い出したくない出来事もあります。
台湾に住む元日本兵の、「だけど……、戦争はもういやだ……」というつぶやきは胸に刺さります。
佐藤先生の、「この言葉はどんな反戦の言葉よりも力がある」という意見はうなずけました。

私が佐藤先生の事を凄いと思うのは、作家としてももちろんですが、その個性的な人柄にもあります。
先生が度々お怒りに任せて切る啖呵は、聞いていて気持ちがいいものです。
「よくぞ言ってくれました!」と、スッキリします。
ところがその一方で、「私の事をゼッタイ許さないと思っている人はいっぱいいるだろうけど…。」と、ご自身で自覚していらっしゃるところが面白く、そんなところが清々しくて凄い方だなあと思うのです。

お二人の共著であるこの本を読んだ私の感想は、だいたいこんな感じです。
台湾についての政治的な内容は、一見難しそうに感じられるかもしれませんが、そんな事はありません。
お二人の仲の良さが分かるような、ざっくばらんな文章で綴られているので、読みやすいと思います。
それでも中身は深いし、台湾の独立については、今まさに注目されている出来事でもあるので、是非読んでみることをおすすめします。

 

 

 

歌野晶午さんの「絶望ノート」という本

お正月も終わってしまいました。
けれども、みなさんそれぞれ思い出に残るお正月を過ごされた事ではないでしょうか。

私はというと、お正月休みの間に一冊の本を読み終えました。
歌野晶午さんの「絶望ノート」という本です。
歌野晶午さんの本を読むのは初めてです。
文庫にしてはなかなかの厚みで、読み応えがありそうだったので選びました。
この本のすごいところは、これだけの厚みがありながら、最後まで読者を飽きさせないところにあると思います。

物語は、主人公の少年が命名した「絶望ノート」というノートに記された日記を中心に進んでいきます。
名前、「絶望ノート」ですよ。
穏やかな内容であるはずがありません。
内容は、主人公の少年がクラスメイトにいじめられるというものがほとんどです。
あとは、ちょいちょい自分の家庭の不満とかが綴られていたりします。
これだけ絶望的な内容だと、逆に、「次はどんな不幸が訪れるのだろう?」なんて、ワクワクしてしまうくらいです。
いや、ワクワクはひどい。
ハラハラですかね。
そのハラハラが途切れる事なく、最後まで読者を引っ張っていくのだからすごいのです。

でも私は「あの結末はおしかったな〜!」なんて、ちょっと思ったりしています。
後半、明るみにされる事実が多くてとっちらかってしまった印象があるのと、含みを持たせるようなラストが、個人的には好みではないからです。
人によってはこういう終わり方が好きな方もいると思うので、これは好みが別れるところではあります。
それと、少年のクラスメイトの大迫っていう子のキャラが好きだったので、もうちょい最後のほうにでも登場して欲しかったな…なんて思っています。

私の印象はこんな感じなのですが、本は実際に読んでみて、それぞれの人がいろいろな感想を持つものだと思います。
私と違って「ああいう終わり方がいいんじゃないか。」という印象を持つ人も大勢いるはずです。
なので、気になる方は是非、読んでみて下さい。
読者を飽きさせない展開は素晴らしいのでオススメです。