Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

「冬子の兵法 愛子の忍法」という本について

お正月に主人の実家へ遊びに行った時、お義母さんから本を何冊かお借りしました。
その中のひとつに「冬子の兵法 愛子の忍法」という本があったので、今回はこの本についての感想を書きたいと思います。

この本は、佐藤愛子先生と上坂冬子先生の共著であり、お二人の往復書簡をまとめたものです。
そういった内容のせいか、「佐藤先生の番」と「上坂先生の番」とで気持ちの切り替えができて、私にとってはよみやすかったです。
話題は多岐にわたります。外交の話や戦後の日本についてなど、人生の大先輩であるお二人の文章の中には、勉強になるものがたくさんありました。
戦争についてのリアルな感想は、今の私達の考えがいかに薄っぺらいものであるかを認識させられたりもします。
上坂先生と佐藤先生は、台湾についての本を書かれており、そのあたりの話題は本当に勉強になりました。
その事についてもう少し詳しく、おひとりずつに分けて、感想を書かせて頂きたいと思います。

上坂先生は、ノンフィクションの作品をいくつか書かれている作家さんです。
その中の、「虎口の総統 李登輝とその妻」という本は、台湾でベストセラーになったそうです。
この本は、題材となった李登輝さんご本人も読まれ、その感想を、側近を通じて上坂先生に伝えられていました。

本書、「冬子の兵法 愛子の忍法」にもどります。
上坂先生は台湾の事にとても詳しく、この本の中に書かれている、李登輝さんが来日した時のエピソードなどはとても興味深いものでした。
中国の横暴さや、日本政府の弱腰な姿勢がよく分かるエピソードです。
また別の話になりますが、李登輝さんのお兄さんは日本兵として戦死しており、靖国神社に祀られているそうです。
その事について李登輝さんが「静かに参拝できる時がきたら行きたい」と、おっしゃっていたのが印象深かったです。
李登輝さんは本当に凄い人です。
多くの日本人から好感を持たれている人物ですが、その事は上坂先生の語る李登輝さんのエピソードからも納得できます。
上坂先生は正直で真っ直ぐな所があり、様々な物事に対する探究心から意欲的に行動ができる方だと思いました。
歳を重ねてそういう気持ちを持ち続けられる方は、なかなかいないと思います。
私も上坂先生を見習いたいなと思いました。

一方、もう1人の著者でもある佐藤先生も凄い方です。
最近では「九十歳。何がめでたい」という本がベストセラーになったので、ご存知の方も多いと思います。
私も佐藤先生の本はたくさん読ませて頂きましたが、全部はとても読めないだろうなあ、と思うくらい、たくさんの本を書かれています。
その中に、台湾人の元日本兵を題材にした「スニヨンの一生」という本があります。
佐藤先生もまた、この本の執筆のために台湾へ行って現地の方々に取材してきています。
その時の体験談で語られる、台湾人の素朴な人柄は、私にとってとても好感が持てるものでした。
ですが、良い話ばかりではありません。
取材の話題の中には、戦争当時の思い出したくない出来事もあります。
台湾に住む元日本兵の、「だけど……、戦争はもういやだ……」というつぶやきは胸に刺さります。
佐藤先生の、「この言葉はどんな反戦の言葉よりも力がある」という意見はうなずけました。

私が佐藤先生の事を凄いと思うのは、作家としてももちろんですが、その個性的な人柄にもあります。
先生が度々お怒りに任せて切る啖呵は、聞いていて気持ちがいいものです。
「よくぞ言ってくれました!」と、スッキリします。
ところがその一方で、「私の事をゼッタイ許さないと思っている人はいっぱいいるだろうけど…。」と、ご自身で自覚していらっしゃるところが面白く、そんなところが清々しくて凄い方だなあと思うのです。

お二人の共著であるこの本を読んだ私の感想は、だいたいこんな感じです。
台湾についての政治的な内容は、一見難しそうに感じられるかもしれませんが、そんな事はありません。
お二人の仲の良さが分かるような、ざっくばらんな文章で綴られているので、読みやすいと思います。
それでも中身は深いし、台湾の独立については、今まさに注目されている出来事でもあるので、是非読んでみることをおすすめします。