「シナプスが人格をつくる」ジョゼフ・ルドゥー著 森憲作監修 谷垣暁美訳
「オヤジ、心って何だろう?ただの電気信号システムなのかな?それとも手でさわって確かめられるものなのかな?」
この本は、アニメ「シンプソンズ」の、バートシンプソンのこのセリフから始まります。
こういうと、脳科学の難題も子どもの素朴な疑問も同列のように感じられますが、
実際、脳科学について書かれたこの本は、脳の複雑な仕組みやそれに関する専門用語が並んでいて、理解するのはなかなか大変でした。
はっきり言って、ざっとしか読んでいないし、正しく理解してるのかも怪しいです。
けれども、私はこういう本が好きです。
いわゆるハウツーものではなく、専門的な知識を一般の人にも分かるように、易しく丁寧に解説しているところに作者の誠意が感じられます。
脳科学は難解です。
この本の最初ほう…1、2章までは、前置きのようなかたちで、脳がどのように人格とかかわっているのかなどをざっと説明しています。
驚いた事に、ヴァチカンでも脳と魂の関係について議論されていたようでした。
そして、魂も物質的なものとしてとらえているようです。
そして第3章あたりからは、ニューロンやシナプスについて、扁桃体について、神経伝達物質についてなど、脳の働き、変化、感情の仕組み、シナプスの病気、精神病、などなどが細かく丁寧に書かれています。
特に印象に残っているのは、脳の働きを盛大なカクテルパーティに例えたり、精神医学が脳を繊細なスープに例えているところです。
脳はものすごくたくさんの仕事をこなし、複雑に作用するものだと実感させられます。
さらに、脳が遺伝から影響を受けるのはせいぜい50パーセントで、それ以外の環境などの影響が大きく、それも可塑的(かそてき)であるという事は覚えておきたい事です。
自分が何者か?脳が心を作るのか?などを私はずっと疑問に思っていました。
そして結局、答えがないというのが答えなのかなと思いました。
この本の最後に書いてある、
「あなたはあなたのシナプスだ」
という言葉が力強く、答えのない答えを納得する事ができました。
そしてこの言葉には、つねに作られるのを待っている新しい接続があるからという説明がつきます。
新しい接続とは、いろんな可能性を含んだ希望のように感じられました。