Mayのブログ

読んだ本についての感想など。

風の墓碑銘(エピタフ) 乃南アサ

夏休み後半、おもに私は、「女刑事 音道貴子シリーズ」を読んで過ごしていました。

乃南アサさんのミステリー小説で、音道貴子という女刑事さんが活躍するシリーズです。
長編もあれば短編もあります。

そこで今回はその中のひとつ、「風の墓碑銘(エピタフ)」という長編小説を取り上げたいと思います。

事件は家屋の解体現場から、男女2体の人骨と1体の嬰児の骨が発見される事から始まります。
死亡時期が、15年〜25年ほどのものと推測されるため、身元の判明も困難な状況から捜査は難航していくのです。

そんな状況の中、地道な捜査を根気よく続ける刑事さん達は大変だなあと思いつつ、捜査によって少しずついろんな事実が判明していく過程は読み応えがあるなあと、感じました。

けれども正直、謎解きよりも女刑事さんをとりまく人間関係に焦点を当てた内容になっている感じで、推理しながら小説を読み進めるのが好きな読者向きではないかもしれないな、と、思いました。

でも、その人間関係がとても興味深くて面白いのです。

音道刑事さんは今回、滝沢刑事さんと組んで捜査をすすめていきます。
「凍える牙」という本を読んだ方ならご存知かもしれませんが、その時にも登場した滝沢刑事さんです。
お腹が出ていて頭髪が薄くなりかけた、さえない中年のおじさんです。

おじさんは若い女性の心理が分からないし、女刑事さんもおじさん刑事の無神経なところにイラッとさせられてばかりです。

なのになのに、捜査にあたる2人は、まるで夫婦のように息ピッタリ。
お互いの心が読めるみたいな場面が多く見られるのです。
それを女刑事さんが「なんでよ!」みたいに思っているところがちょっと面白いです。

また、女刑事さんの恋愛事情とか友人関係なども注目すべきところで、音道貴子さんという1人の女性がとてもリアルに感じられます。

ラストは音道刑事の女性らしい優しさが事件の解決に繋がったような感じで、とてもスッキリするものでした。

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