死神である「千葉」は、事故や他殺など、特別な理由で亡くなる事が予定されている人間に対して調査をし、予定通りに死なせるかどうかの可否を決定する仕事をしています。
今回その調査対象となっている人物が作家の山野辺です。
彼は、一人娘を知り合いの青年に殺されています。
この青年は、いわゆるサイコパスと言われる人格の持ち主で、娘を殺害した証拠を掲示するなどして山野辺を挑発をします。
死神の千葉が調査のために山野辺に接触した時、彼は妻と共に一人娘を殺害した青年に対して復讐する準備をしていました。
そして、その復讐に千葉も付き合う事となり…。
サイコパスの青年が仕掛けてくる罠からストーリーがどんどん進んでいくので、ノンストップで物語が楽しめます。
死神「千葉」のキャラクターが良い味なのです。
「人間はいつか死ぬ」…知ってはいても、忙しい日常の中では忘れてしまいがちです。
ですが、この小説を読んで「死」というものについて、いろいろな角度から考えてしまい、ちょっと怖いなと思ってしまいました。
死ぬ瞬間ってヤダなあ…とか、死んだら無になるとしたら、無になるってどういう事か分からないなあ…とか、そんな程度なのですが…。
あともう1つ、殺人犯がサイコパスというところから、サイコパスというものについても考えさせられました。
アメリカでは25人に1人はいるという、良心を持たない人間…。
まぁでも、こういう人達は、損得勘定を利用して上手に付き合っていけば大丈夫かもしれないなと思いました。
でも、友達にはなりたくないです。
「良心」がないって、私にとっては未知の人格です。
幽霊とか宇宙人とか…、あと、AIなんかも…、未知のものって、なんだか怖いです。
一方この小説では、人と人との心の通いあいを感じる、ほっとする場面もたくさんあります。
それは、偉人の言葉が多く引用されている場面であったりもします。
私も本を読んだ時など、よく、感銘を受ける言葉を見つけるのですが、今となってはその言葉がどこの誰の言葉なのか分からなくなってしまう始末です。
ですが、知らない間に良い言葉が自分の心の一部を形成しているのかもなあ…などと考えたりしました。
「死」とか「復讐」とか、穏やかではないものがストーリー全体に影響を与えているものの、それ以上に人間の心の温かさが目立ち、しかも、サイコパスの青年は、その行ないに相応しい結末を迎えるので、読み終わった後は、なんだか清々しい気持ちになりました。