鷹の王 C・Jボックス
前回、「狼の領域」という本のブログを書いた時、大切な登場人物の事を書き忘れた!…と、思いました。
それがこの小説の主人公、ネイトです。
ネイトは普段、「ジョー・ピケットシリーズ」の中では、「謎の組織に追われているために隠れて暮らし、ジョーが困っている時には手を貸してくれる人物」と、いう役どころです。
例えて言うなら、「水戸黄門」で言うところの「風車の弥七」みたいな…。(例え古…💦)
そんな、とっても強くて頼りになる存在です(^^)
ところで、何故この本のタイトルが「鷹の王」なのか?と、言うと、
それは彼が鷹匠だからです。
そして本書には、彼が鷹匠になった理由…、彼が謎の組織に追われている理由…などが書かれています。
その謎の組織は、今までの敵とは全く異なる本物のプロです。
なので、ネイトの大切な人々に危険が迫っている場面は本当に迫力がありハラハラします。
もちろんジョーも例外ではありません。
なのに彼は逃げないんですよね…
相変わらずというか頑固というか…
そんなジョーを説得する時のネイトのセリフはとても印象的です。
ネイトが本心をここまで明かしたことは今までにないからです。
この小説は、シリーズのファンにとっては待ち望んでいた書ではありますが、はじめて読む読者にとっても、ネイトというキャラクターの魅力やアクションの迫力は十分に伝わるものだと思いました。
そして、彼等の強い絆も…(^^)
「狼の領域」 C・Jボックス
この本は、アメリカのベストセラー、「猟区管理官ジョー・ピケット」シリーズのうちのひとつです。
シリーズと言っても1話完結型なので、
「最初の作品を読んでないからわかんない!!(>人<;)💦」…なんて事にはなりません。
実際私はこの、9作目の作品をはじめて読んで、
「凄いなあ!(✪▽✪)✨」と、感動したのです。
なので、シリーズのどの作品から読んでも全然OKだと思います。
それでは、この9作目にあたる「狼の領域」について、
一体どんなところを凄いと思ったのか、私なりに語っていきたいと思います。
主人公ジョー・ピケットは「猟区管理官」という、ちょっと日本では聞きなれない仕事をしています。
これは、狩猟に関する違法行為を取り締まる仕事です。
その中で彼は、大自然の中で暮らす、ある複雑な過去を持つ兄弟を取り締まらなければならない立場に立たされます。
その兄弟は人間として間違った事をしている訳ではないのですが、国の決めた法律を犯しているのです。
彼等はジョー・ピケットに対して「政府側の人間」と、言います。
それに対しジョー・ピケットは、「政府側の人間ではない。野生生物側の人間だ。」と、考えます。
そんな真面目なジョー・ピケットなので、彼等に真摯に立ち向かうのです。
その結果、「もうこれは刺し違えるしかない!」とまで追い込まれ、
圧倒的に自分より強いと思われるこの兄弟に負ける事まで予測し、死を覚悟します。
ジョー・ピケットは、ヒーローでも何でもない普通の男なのです。
このシリーズは、全編通して大自然の描写の素晴らしさと、主人公の、「不器用で真面目な男」と、いうキャラクターがストーリーの基本にあり、それが話を面白くしていると思います。
特にこの「狼の領域」では、死を覚悟した主人公の、考える事や感じる事には神聖さすら感じます。
その事を私は凄いと思い、深い感動を覚えるのです。
「ネコと昼寝」 群ようこ
「ネコと昼寝」。
私ならこのタイトルでゴハン3杯はいけます。
…って、ネコは食べ物じゃないし。
私はただ、それくらいステキなタイトルだと思ったのです。
この本は、群ようこさんの「れんげ荘」物語のひとつです。
主人公キョウコさんは、いろいろあって仕事を辞め、貯金を切り崩す生活をしています。
家賃節約のため、「れんげ荘」というボロアパートに住み、倹約倹約の毎日です。
そんな中、私が注目したのは「れんげ荘」の住人さん同士の交流です。
お隣に住むオシャレな年配女性クマガイさんや、宇宙的魅力を持つチユキさん、海外を飛び回る元気なコナツさんなど、彼女達は個性的だけどもイイ人なのです。
さらに今回は、カワイイ訪問者も現れます。
キョウコさんが「ぶちお」と名付けたネコです。
アパートにふらっと訪れては、ちょっとお邪魔して帰る…キョウコさんにとって「ぶちお」は、まるで気まぐれな恋人のようです。
でも、私もほんのちょっとだけ、彼女の気持ちが分かるような気がします。
猫とのお昼寝は私にとっても至福の時間なのです。
「働かない」という選択をしたキョウコさん。
日々悩み考える真面目な性格の彼女に好感が持てます。
この物語は地味ではあるけれども、逆にそれが現実的で飽きのこないストーリーになっているのだと思います。
「SOSの猿 」 伊坂幸太郎
この本は私が、
「元気が出るために本を買おう…、でも、もうこの世にいない人の本は辛くて読めないなあ…。」
などと考えながら、迷いに迷ったあげくに買った本です。
どういうお話かと言うと、他人からのSOSを無視できない主人公が、無力な自分に悩みつつ、悪魔祓いのノウハウを使って引きこもりの男の子を救おうとするお話です。
何故タイトルが「SOSの猿」なのかと言うと、主人公が悪魔を祓おうとしたら、孫悟空がでてきちゃったからです。
まず読んでみて思った事は、世の中そう単純にできてはいないと言う事です。
悪い出来事が起きるのは悪い人間のせい?
…ではなく、悪い出来事にはいくつものヒモがついているようだ…、と。
この小説の中では猿(孫悟空)の働きによって、いくつものヒモが1本に繋がっていき、あれの意味はこれの事?など、後半いろいろ分かってきて楽しかったです。
物語の合間に、「人の気持ちは本当には分からない。」とか、「自分の気持ちを言ったところでそれは文章化されたものだ。」とか、「暴力はどんな時にも悪い事?」など、哲学的な言葉に出逢ったりするのは、この作者ならではだと思いました。
誰かを助けたいと思う気持ちとはどういうものか…?
私もこの小説の主人公のように悩んでいます。
けど結局最後に思った事は、私の知らないところで誰かに誰かのSOSが届いて、届いたSOSから誰かがスゴい絵を描いちゃったりしてるのだとしたらびっくりだなあと言う事です。
アークノア1「僕のつくった怪物」 乙一
本屋さんに行くと、ついつい探してしまう本があります。
乙一さんのアークノアシリーズ、3巻です。
2巻の「ドラゴンファイヤ」が出版されてからずい分経つので、そろそろかな?と、思い、探しています。
でも、ありません。
で、さっきちょっと調べたのですが、
3巻の発売予想は2021年3月24日となっていました。
けっこう先ですね。
でもこれ、「発売予想」なので正確ではありません。
さらに分かった事は、この小説は三部作になっていて3巻で完結との事でした。
3巻楽しみです。けっこう先だけど…。
さて、ここからが本題。
乙一さんのアークノアシリーズ1巻「僕のつくった怪物」についての感想です。
まずはストーリーのざっくり説明から。
この物語は異世界モノです。
いじめられっ子の兄弟、アールとグレイが異世界「アークノア」に迷い込みます。
それと同時に、兄弟それぞれの心の闇が「アークノア」で怪物となって現れてしまうのです。
彼らが元の世界に戻るには、この怪物を退治しなくてはいけません。
もし退治できなかったら…。
…みたいなのが、ざっくりとしたストーリーです。
ところで、他にもこの本の感想を書いてる方がいました。
そしてその方は、この物語を「凡庸」と書いていました。
「凡庸」…。
うーん…。
実を言うと、この方がそう書く気持ち、私もちょっと分かるんですよね。
確かに私も、他の乙一さんの作品に比べたら「凡庸」かな…、と…。
でもこの物語は、ちょっと自分に自信が持てない私にとって、心に刺さる部分がいくつかあるんです。
例えば、アールの弟であるグレイは、いつも他人に嫌われような言動ばかりをとってしまいます。
その事に関して、
“嫌われてるほうが楽なんだ。ずっとずっと楽なんだ。”と書いてある部分があります。
私も他人に対して、よく、こんな考え方をしていたのです。
なので、ここを読んだ時、他にも自分と同じような考えを持つ人がいたと思えて、ちょっと嬉しくなりました。
そもそもこの物語は、冒頭からこの兄弟が受けたいじめのエピソード満載なのです。
同じような経験を持つ人にとっては心に刺さる部分も多いのではないかと思います。
その他にも私の心に刺さる部分があります。
「ハンマーガール」と呼ばれる女の子のキャラクターです。
この女の子は、アールやグレイと一緒に怪物退治をするのが仕事です。
でも、とある理由から、彼らと距離を置かなくてはいけません。
しかも、彼女はアークノアの多くの住人から恐れられています。
そんな彼女は私にとって、強がりで孤独な少女というイメージがあり、そこが私の心に刺さるのです。
心の闇だとか孤独だとか、私の心に刺さる部分が多いこの物語。
3巻では一体どんな結末を迎えるのか、そこのところが今からとっても楽しみです。
風の墓碑銘(エピタフ) 乃南アサ
夏休み後半、おもに私は、「女刑事 音道貴子シリーズ」を読んで過ごしていました。
乃南アサさんのミステリー小説で、音道貴子という女刑事さんが活躍するシリーズです。
長編もあれば短編もあります。
そこで今回はその中のひとつ、「風の墓碑銘(エピタフ)」という長編小説を取り上げたいと思います。
事件は家屋の解体現場から、男女2体の人骨と1体の嬰児の骨が発見される事から始まります。
死亡時期が、15年〜25年ほどのものと推測されるため、身元の判明も困難な状況から捜査は難航していくのです。
そんな状況の中、地道な捜査を根気よく続ける刑事さん達は大変だなあと思いつつ、捜査によって少しずついろんな事実が判明していく過程は読み応えがあるなあと、感じました。
けれども正直、謎解きよりも女刑事さんをとりまく人間関係に焦点を当てた内容になっている感じで、推理しながら小説を読み進めるのが好きな読者向きではないかもしれないな、と、思いました。
でも、その人間関係がとても興味深くて面白いのです。
音道刑事さんは今回、滝沢刑事さんと組んで捜査をすすめていきます。
「凍える牙」という本を読んだ方ならご存知かもしれませんが、その時にも登場した滝沢刑事さんです。
お腹が出ていて頭髪が薄くなりかけた、さえない中年のおじさんです。
おじさんは若い女性の心理が分からないし、女刑事さんもおじさん刑事の無神経なところにイラッとさせられてばかりです。
なのになのに、捜査にあたる2人は、まるで夫婦のように息ピッタリ。
お互いの心が読めるみたいな場面が多く見られるのです。
それを女刑事さんが「なんでよ!」みたいに思っているところがちょっと面白いです。
また、女刑事さんの恋愛事情とか友人関係なども注目すべきところで、音道貴子さんという1人の女性がとてもリアルに感じられます。
ラストは音道刑事の女性らしい優しさが事件の解決に繋がったような感じで、とてもスッキリするものでした。
「死神の浮力」 伊坂幸太郎
死神である「千葉」は、事故や他殺など、特別な理由で亡くなる事が予定されている人間に対して調査をし、予定通りに死なせるかどうかの可否を決定する仕事をしています。
今回その調査対象となっている人物が作家の山野辺です。
彼は、一人娘を知り合いの青年に殺されています。
この青年は、いわゆるサイコパスと言われる人格の持ち主で、娘を殺害した証拠を掲示するなどして山野辺を挑発をします。
死神の千葉が調査のために山野辺に接触した時、彼は妻と共に一人娘を殺害した青年に対して復讐する準備をしていました。
そして、その復讐に千葉も付き合う事となり…。
サイコパスの青年が仕掛けてくる罠からストーリーがどんどん進んでいくので、ノンストップで物語が楽しめます。
死神「千葉」のキャラクターが良い味なのです。
「人間はいつか死ぬ」…知ってはいても、忙しい日常の中では忘れてしまいがちです。
ですが、この小説を読んで「死」というものについて、いろいろな角度から考えてしまい、ちょっと怖いなと思ってしまいました。
死ぬ瞬間ってヤダなあ…とか、死んだら無になるとしたら、無になるってどういう事か分からないなあ…とか、そんな程度なのですが…。
あともう1つ、殺人犯がサイコパスというところから、サイコパスというものについても考えさせられました。
アメリカでは25人に1人はいるという、良心を持たない人間…。
まぁでも、こういう人達は、損得勘定を利用して上手に付き合っていけば大丈夫かもしれないなと思いました。
でも、友達にはなりたくないです。
「良心」がないって、私にとっては未知の人格です。
幽霊とか宇宙人とか…、あと、AIなんかも…、未知のものって、なんだか怖いです。
一方この小説では、人と人との心の通いあいを感じる、ほっとする場面もたくさんあります。
それは、偉人の言葉が多く引用されている場面であったりもします。
私も本を読んだ時など、よく、感銘を受ける言葉を見つけるのですが、今となってはその言葉がどこの誰の言葉なのか分からなくなってしまう始末です。
ですが、知らない間に良い言葉が自分の心の一部を形成しているのかもなあ…などと考えたりしました。
「死」とか「復讐」とか、穏やかではないものがストーリー全体に影響を与えているものの、それ以上に人間の心の温かさが目立ち、しかも、サイコパスの青年は、その行ないに相応しい結末を迎えるので、読み終わった後は、なんだか清々しい気持ちになりました。